東野圭吾『予知夢』

 帝都大学の湯川助教授には二つの顔がある。一つは肩書きどおり学生を相手に指導する物理学助教授としての顔。もう一つは、友人である警視庁の草薙刑事に求められ、不可解な事件の謎を科学的に解明する「ガリレオ先生」としての顔・・・


 大人気『探偵ガリレオ』シリーズの第二短編集。今回も湯川助教授が奇妙な事件に挑みます。ただ、前作よりも幾分科学的な色合いは薄くなったでしょうか。
「夢想る(ゆめみる)」
 少女の部屋に侵入したストーカーは、少女が生まれる前から結ばれることを予知していた・・・そんなことが本当にありえるのだろうかと。冒頭にこの作品が来たことが、『探偵ガリレオ』とは少し違う路線にあることのあらわれかも。
「霊視る(みえる)」
 恋人が殺された夜、男は留守番の友人の家で見たのは恋人の亡霊?・・・比較的オーソドックスな本格ミステリ。正直なところ、このシリーズでなくてもいいように思えます。
「騒霊る(さわぐ)」
 夫の失踪への関与が疑わしい木造家屋は、ある時刻になると動き出す・・・ラストが救いになっているといえるのかどうか疑問ですが、何もないよりはいいのかも。
「絞殺る(しめる)」
 町工場の社長がホテルで絞殺された。アリバイが怪しいこと、多額の保険がかけられたことから妻が疑われるが・・・アリバイの使い方が一風変わっていて興味深い作品。
「予知る(しる)」
 浮気相手が男の自宅の目の前の部屋で首を吊った。だが、少女は三日前にも同じ光景を目撃していた・・・前作のイメージを一番残している作品かも。科学を否定するようなラストが印象的。


 前作よりも科学的な側面が少し減ったような印象があります。その影響があってか、幾分読みやすくなった気がします。もっとも、逆にインパクトは弱くなりましたね。
 また、「絞殺る」を読むとなんとなく湯川の人間的な一面が見えてきます。前作ではあまり気にしなかったのですが、今にして思えばそういう面は見られなかったかもしれません。「科学マシン」みたいで。


収録作:「夢想る(ゆめみる)」「霊視る(みえる)」「騒霊る(さわぐ)」「絞殺る(しめる)」「予知る(しる)」
関連作:『探偵ガリレオ

2008年11月21日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
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