雫井脩介『クローズド・ノート』

 文具店でバイトをする大学生の香恵は、自室のクローゼットで前の住人が忘れたらしきノートを見つけた。「伊吹's note」と題されたノートは、真野伊吹という女性教師の学校での出来事や恋が書かれた日記だった。バイト先に現れるイラストレーター石飛に惹かれたり、友人葉菜の恋人鹿島に告白されたりするうちに、香恵は日記の中の伊吹に自分を重ねあわせ、勇気づけられていく。


 初雫井なのですが、『クローズド・ノート』はミステリではなく恋愛小説でした。
 たしかにいい話、感動を誘う話、ですがそれだけかな。絶賛はしないけど、読んで損もしないと思います。
 作中の人物にとってはともかく、読み手側からは結末がかなり想像できてしまう*1ため、結末に至ってもイマイチ感が残ってしまいました。やっぱり、ミステリ作家が書いた作品なので、どうしてもサプライズを期待してしまうのです。
 ライバル?と対峙したり、お弁当の差し入れなんてしてみたりという話で、極端にストレートな恋愛小説です。そこに「伊吹's note」のエピソードが絡むというシンプルなつくりだと思うのですが、それでも読ませるのは「作家・雫井脩介」の力量でしょうか。もっと凝ったつくりにしてほしかった気がしますが、ケイタイ小説だったことを考えるとこの辺が妥当なのかもしれません。また、香恵が天然系のキャラクターだったことで、なんとなく物語全体があたたかい雰囲気になっているのだと思います。


 そうそう、万年筆がほしくなりました。今まで万年筆にいい思い出はないし、正直ほとんど使ったこともないのですが、1本手元においておきたいな、なんて。仕事でもプライベートでも使う時なんてないですけどね。

2006年9月5日読了 【6点】にほんブログ村 本ブログへ
おすすめ平均 star
star読み終わって、別の意味で泣きました。
star青春の残り香が漂う
starわくわくしながら読み終えました
stars感動の日記
stars雫井脩介、おまえもか

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*1:意図したことか?