若竹七海『猫島ハウスの騒動』

 人間よりも猫の数が多いという猫の楽園・猫島。稼ぎ時の夏休みに、民宿「猫島ハウス」の娘・杉浦響子は家業の手伝いに精を出していた。一方、同級生の菅野虎鉄はナンパに精を出した結果、入り江でナイフが突き刺さった猫を見つけてしまった。平穏だった猫島は、大騒動に巻き込まれていく・・・


 若竹さんの久しぶりの新作『[rakuten:book:11883197:title]』は、あの葉崎の先にある猫島が舞台。それだけにかなり期待していたのですが、その期待にこたえてくれる作品でした。


 たくさんの猫はもちろんのこと、数多く登場する人物たちが魅力的です。それぞれに多かれ少なかれ役割が与えられ、面白おかしくユーモアいっぱいに書かれているのですが、そんな中に若竹さんの独特な毒というか、シニカルな部分が紛れ込ませてあります。
 しかも、それがいかにもいそうな人物ばかり。あんな人、こんな人。「いるいるっ」て人ばかり。こういう感覚が、物語にのめりこませるコツなのかもしれません。


 もちろん、物語も謎解きがしっかりしています。読んでいる過程では、多少あちこちへ広がりすぎている気もしたのですが、最後にはそれがしっかりキュッキュッキュッとまとめられていきます。あちらこちらに撒き散らされた伏線が一箇所に集められる様は圧巻です。
 伏線といえば、なんだかいろいろなことが次回作へつなげられていくような感じです。例えば、響子と虎鉄の間には、修学旅行で何があったのかとか。早くも次回作が楽しみなのです。


 欲を言えば・・・夏休みの午後に、リゾート地で読みたかった! そんな本です。


関連作:『ヴィラ・マグノリアの殺人』『古書店アゼリアの死体』『クール・キャンデー』

2006年9月2日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ

【感想拝見】

おすすめ平均
starsミステリ初心者にも良い
stars猫たちににんまり

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