東野圭吾『ゲームの名は誘拐』
敏腕広告プランナーの佐久間駿介は、決まりかけていた日星自動車向けの大型企画を同社の副社長・葛城勝俊の一存で白紙に戻され、企画そのものからも降ろされてしまった。酔った勢いで葛城邸に押しかけようとした佐久間だったが、塀を越えて家出を試みた葛城の娘・樹理をと出会う。二人は手を組み、狂言誘拐を企てることにした。ゲームの始まりである。
1冊前に読んだ『誘拐の果実』に続く誘拐もの。
なるほど、軽めで読みやすい作品ですが、最後まで飽きさせないおもしろい物語です。もちろん「ゲーム」の行方についてはある程度予想がつくし、葛城とのやり取りから佐久間の身元が容易に特定されるだろうとも思われます*1。
『誘拐の果実』が事件を複雑に絡め、誘拐の動機に焦点を当てた大作であったのに比べ、『ゲームの名は誘拐 [ 東野圭吾 ]』はテンポの良さと展開のおもしろさで狂言誘拐を書ききるという、エンターテインメントに徹したような作品です。また、伏線の張り方が見事に計算されていて、これが雑誌連載されていたということに感服です。
傑作を出し続けている東野さんだけに代表作とは言えないでしょうが、決して重厚長大な大作がすべてではないというような佳作です。
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