似鳥鶏『さよならの次にくる〈卒業式編〉』
小学校の卒業式。あの日理由あって渡せなかったラブレター。旧友との偶然の再会から思い起こされた、そのラブレターにまつわる一連の出来事。葉山がそのときとった行動は、どんなことだったのか・・・(「あの日の蜘蛛男」)
似鳥鶏さんの新作は〈卒業式編〉〈新学期編〉の2冊で1セットの構成。あの人たちが帰ってきました。
●「あの日の蜘蛛男」
あの日の出来事の再現。それは閉じ込められたビルの屋上からの脱出。しかも、隣のビルの屋上へ・・・なんだかとっても無理がありそうな気がする脱出方法。食べ続ける柳瀬さんが印象的。
●「中村コンプレックス」
貼り出された怪文書。自分がやったと名乗り出たのは、葉山の初恋の人、渡会千尋だった・・・トリック云々よりも葉山君がかわいそうでなりません。まあ、この手の物語としては想像できる範囲の出来事ですが。ミステリとしてはさほど驚くトリックではありませんでしたが、青春ミステリとして主人公が甘さとほろ苦さを押さえている点に好感が持てます。渡会さんの登場シーンが多ければ、さらに青春しているように見えたかも。
●「猫に与えるべからず」
公園にいた野良猫が死んだ。管理人は夜中の警備中には死体はなかったというが・・・最も驚かせる部分は他にあった。それ以上に言いようがありません。
●「卒業したらもういない」
いよいよ伊神先輩の卒業式。だが退場の最中に伊神は消えてしまった。どこへ・・・巻末に来たのは伊神先輩の旅立ち。当然ですがこのまま退場してしまうとは思えないのですが。
四編による連作短編集。ただ、連作としてはその完成を〈新学期編〉に委ねているため、評価のしようがありません。
前作もそうでしたが、ミステリとしては全体的にトリックが弱く、どちらかといえばユーモアとキャラクターを押し出すタイプでしょうか。ただ、あと一歩突き抜けるものがほしかった気がします。その辺、〈新学期編〉では解消されているでしょうか。
収録作:「あの日の蜘蛛男」「中村コンプレックス」「猫に与えるべからず」「卒業したらもういない」
関連作:『理由あって冬に出る』
さよならの次にくる <卒業式編> (創元推理文庫) | |
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