平山瑞穂『桃の向こう』
何ごとにも理想や自分の哲学を優先する来栖幸弘。ボンボンで自信家の多々良晃司。まったく相容れないふたりだが、彼らは仁科煌子を通して繋がっていた。才色兼備で純粋、そして一本気な彼女を介した大学生三人の奇妙な関係は、バブル後の時代を駆け抜けてゆく・・・
バブル崩壊後現在まで、三人の特徴的な若者の生き方を描いた小説。
特徴的とはいうものの、三人はリアリティがないというほど浮世離れした人物ではありません。むしろ、この程度ならちょっと変わった人、というくらいでしょう。
そうは言っても、最初に登場する来栖の考える恋愛、これが非常に回りくどく、読んでいて辟易してしまいます。語られている対象が対象だけに、もっと物事単純に考えてしまえばいいのにと思わずにはいられません。。
対照的に多々良はお気楽で空気が読めない感じ。とはいえ、いちばん一般的でしょうか。多々良の言動がいちいちあの頃のトレンディドラマを反映したみたい。まあ、僕自身バブルには乗り遅れた世代ですので、ほかに知るすべを持たなかったのですが。
三人の中でいちばん掴みどころがなかったのが煌子でした。来栖や多々良の生き方、考え方というのがある程度理解できるものだったのですが、彼女だけはかなりわかりにくかったです。物語の中でもあまり語られず、フェードアウトしていった形でしたし。
再会するまでの男ふたりの成長が、決して派手ではないけれど何だか力強く、そしてうれしく思えるストーリーでした。まあ、達観した、丸くなったとも思えますが。
桃の向こう | |
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