湊かなえ『少女』

 剣道で日本一になりながら、試合中のケガで敗れたことと中傷から剣道の道を閉ざした敦子。痴呆の祖母から受けた暴力で左手の握力を失った由紀。互いに親友と認めるふたりだが、距離は少し開いてしまった。紫織から自殺した友人の話を聞き、ふたりは死を身近に感じたいと考えはじめた・・・


 デビュー作『[rakuten:book:13021744:title]』が「イヤミス」として話題になった湊さんの第二作。今回もおそらく同じ路線といえるものでしょう。


 死を感じたい、死の瞬間に立ち会いたい、というふたりの興味は一般的に考えれば不健全です。これだけでも十分に「イヤミス」的な結末を迎える予感が。
 当然のことながらこれだけでは終わりません。作品全体を使った構成が最後にもたらす現実は、見事な繋がりを見せて読者を驚愕に誘い込みます。冒頭から登場する遺書がこういった形で使われるとは、最後の最後まで想像できませんでした。


 ただし、この見事な伏線の回収も、狭い世界から決してはみ出さず、密接に繋がりあっている部分が不自然に感じてなりません。あまりにも世界が閉じています。ちょっときれいにまとめすぎたようで違和感が残りました。裏とはいえ世界中に繋がったネットを扱っているだけに、なおさらそのように感じます。
 「因果応報、地獄に落ちろ」。そんなキーワードで書かれたこの物語。読みやすい文章の中に秘められた人々の負の感情が、強く、そしてはっきりと伝わってきます。


 これだけ繋がってしまうと本当に地獄に落とされるべき人間は誰なのか、もうわからなくなってしまいます。あの人か、それともこの人か。もしかしたらこんなに後味の悪い小説を選んでしまった読者や、書いてしまった湊さんかもしれません。

2009年3月29日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
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おすすめ平均 star
star誰が悪いんだろう。
star遺書
starまさに「少女」な物語
stars期待が大きすぎたのか...
stars何がテーマだったのかがよくわからなかった

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