米澤穂信『秋期限定栗きんとん事件』
互恵関係を解消した小鳩君と小佐内さん。小鳩君は放課後に呼び出され仲丸さんと、小佐内さんは新聞部の一年生瓜野君と付き合い始めた。新聞部の現状に満足しない瓜野君は、連続放火事件を追いかける。一方、小鳩君も堂島健吾の助けを借りて、連続放火を追い始めた・・・
小佐内さん、黒すぎです。
もうそればかりが印象に残って、連続放火事件なんてインパクトが薄れてしまいました。
シリーズを最初から読んできた者にとって、小鳩君の探偵気質や小佐内さんの狼ぶりは周知の事実。従って、たとえこのふたりが別々の相手とお付き合いしても長続きはしないだろうという予測が立ちます。同時に、小佐内さんがおとなしくしているはずがないとも。
ああ、なんて黒いのでしょう。
小佐内さんの狼ぶりも予想以上で驚きましたが、小鳩君もまたやっぱり小市民には程遠い人でした。こんな扱いじゃ仲丸さんかわいそすぎます。いや、仲丸さんもかなりひどい人ですし、小鳩君が小佐内さん以外の人と交際できないことの証明のために存在するわけですが。
その小鳩君が仲丸さんそっちのけで推理してしまった連続放火事件ですが、上下巻を使った割には小振りな事件といえるでしょう。もっとも、ミステリにおける様々な要素が詰め込まれていて、それはそれでおもしろいものでした。
また、小鳩君が解いてみせるいくつかの日常の謎もなかなかのもの。そこには小市民たりえない小鳩君の姿があり、推理の楽しさとともに哀れみすら感じてしまいます。小鳩君にも、放っておかれる仲丸さんにも。
ところで、今回のタイトルに使われたのは「栗きんとん」です。作中ではこの「栗きんとん」と「マロングラッセ」が効果的に使用されていて、感心するばかり。もし初期の告知にあった「モンブラン」だったらどんな内容になっていたのでしょう。そちらの場合もちょっと読んでみたかった気がします。
待った甲斐あって楽しませてもらった『秋』でした。今からもう『冬』が楽しみです。
関連作:『春期限定いちごタルト事件』『夏期限定トロピカルパフェ事件』
【感想拝見】- 粋な提案さま(2009.04.24追加)
- ホシノ図書館(本と映画の部屋)さま(2009.10.05追加)
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