山科千晶『つきこい』
渋谷の月待ち女。それは、毎月満月の晩に渋谷のハチ公前で亡くなった恋人が帰ってくるのを待っている変人と噂される女性、イズミ。噂を知った新谷は彼女を遠くから眺めただけだったが、ハチ公前に行くたびに彼女がその日も待っているのか気になりだした・・・「つきこい」
表題作「つきこい」とイズミがハチ公前で待ち続けるようになったきっかけの物語「月下少年」の中編2作を繋いだストーリー。
正直、「つきこい」の路線でいってくれたほうがよかったです。「つきこい」は大学生でバンドをしている新谷の青春と恋愛が、イズミのミステリアスな雰囲気と相まって幻想的な雰囲気のラブストーリーになっています。しかし、その前日譚にあたる「月下少年」にはファンタジー的な要素が入ってきて、微妙な感じがしてしまいます。ちょっと浮いてしまって。いや、それぞれ独立した物語ならこの要素も割り切って考えられたのかもしれませんが、密接な関係にある2編だけに、なかなかそのようには割り切りにくいのです。
もちろん、「つきこい」から始まってイズミに月待ち女のエピソードがついているのですから、何らかの形でそのきっかけを語る必要はあるでしょう。しかし、そこにこれというのはちょっと残念でした。
でも、こういう構成できれいにまとめられているのは好きですね。
収録作:「つきこい」「月下少年」
つきこい (電撃文庫 や 5-4) | |
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