山口雅也『垂里冴子のお見合いと推理』

 垂里家には呪いがかけられているという説があった。代々垂里家の娘たちの縁談はことごとく不調に終わるというもの。事実、長女・冴子のお見合い回数は二桁の大台にのり、34歳になっても縁談がまとまらない。そして、冴子はお見合いのたびに不可解な事件に遭遇し、その謎を解くのだった。


 『生ける屍の死』『日本殺人事件』、そして「キッド・ピストルズ」シリーズなど、現実世界とは異なる舞台設定が特徴的な山口雅也さん。この『垂里冴子のお見合いと推理』はそういった舞台設定にこだわることのない、きわめて普通な世界のミステリという異色な作品集です。
「春の章 十三回目の不吉なお見合い」
 13回目のお見合いの相手は銀行で融資を担当する男。だが、男はお見合いの席で気もそぞろで、やがて席を立ち他のカップルと口論を始めた・・・キャラクター紹介に重きが置かれていますが、話の運びはなかなかのものでした。
「夏の章 海に消ゆ」
 次の相手は自衛官。付き添いの母親共々海を眺めていることが多かったが、やがて席を立ちそのまま姿を消してしまった・・・本当に実現可能か疑問が残りますが、有り得る気もします。切ないですね。
「秋の章 空美の改心」
 玉の輿に乗れるとばかりにお見合いを横取りした次女・空美。だが、男は途中で体の不調を訴え、やがて直前に亡くなった父親を追うように絶命した・・・大筋では比較的わかりやすい作品。それだけに伏線を振り返るのも楽しいかも。
「冬の章 冴子の運命」
 冴子にもっとも相応しい相手とされたのは小説化の篠山。意気投合した二人だったが、空美と京一は篠山の前歴から冴子が危ないと判断した・・・見えすぎ、嘘がつけないが故の悲劇でしょうか。なんとも切ないです。


 全体的に、造りとしてはホームコメディにミステリを加えたようで楽しいのですが、ストーリーはいろいろと味付けがされていて、中には切ないものもあり十分に楽しませてくれます。長さも程よく、気軽に手に取ることができる短編集です。
 あとは冴子が垂里家の呪いを断ち切り、いつ嫁ぐことができるのかという楽しみがありますが、嫁いでしまってはシリーズが終わってしまい困るのです。ということで、続編に続きます。
収録作:「春の章 十三回目の不吉なお見合い」「夏の章 海に消ゆ」「秋の章 空美の改心」「冬の章 冴子の運命」

2008年1月2日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
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