加納朋子『ぐるぐる猿と歌う鳥』

 父親の転勤で東京から北九州の社宅にやってきた小学5年生の森(シン)。そこで出会ったのはココちゃん、あや、竹本五兄弟、そしてパックという個性豊かな子どもたち。彼らは東京では問題児として扱われてきた転校生のシンをあっさりと受け入れたのだった・・・


 ミステリーランド第13回配本作品。
 どちらかと言えば「かつて子どもだったあなた」よりも「少年少女」に向けて書かれた作品でなのしょうか。子どもの世界の論理を前面に押し立て、それでいて強烈なサプライズもしっかりと効いています。
 また、社宅という仲間意識、身内意識があると思われる空間*1を舞台に使ったことで、子どもたちのネットワークだとか、あるいはパックのような子どもの存在を表現するのにより効果をあげていると感じました。
 子どもたちの身近にある日常の謎を解くだけでなく、ちょっとした冒険めいたことをさせたり、爽やかで楽しい小説です。無論それだけではなく、大人のいやな面もちゃんと見せてくれるのですが。


 ただし、大小のいくつかの謎を用いたことから核となる謎(=サプライズ)に対する注意を集めることがあまりなく、結果として盛り上がりをを欠いていたように思われました。そして、子どもたちや社宅の雰囲気にはどこかノスタルジックなものを感じていたのですが、所々に非常に現代的な記述を見つけ、若干ちぐはぐな印象を受けました。もっとも、これは「かつて子どもだった」者から見た印象ですので、「少年少女」にとってはノスタルジーなんてなく、現代そのものなのかもしれません。
 どちらにせよ、「かつて子どもだったあなた」でも今の「少年少女」でも楽しめる作品でしょう。この子どもたちが活躍する続編も期待したいです。

2007年9月3日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
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ぐるぐる猿と歌う鳥 (ミステリーランド)
ぐるぐる猿と歌う鳥 (ミステリーランド)加納朋子
講談社 2007-07-26
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おすすめ平均 star
starリーダータイプの少年
star小学生に判るのかなあ・・・
starかわいい物語ですが、奥が深いです。

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*1:ごく個人的な先入観に基づいています