雫井脩介『犯人に告ぐ』
神奈川県で連続する児童殺害事件。進展しない捜査に痺れを切らした県警幹部は、左遷されていた男を呼び戻した。巻島史彦。かつて「ヤングマン」と呼ばれた彼が捜査責任者として命じられたのは劇場型捜査。彼が自らテレビニュースに登場し、犯人に呼びかけるというもの。そして彼の左遷の理由は、かつての児童誘拐事件における犯人取り逃がしと記者会見での失態だった・・・
「劇場型捜査」
その言葉からイメージしたのは五十嵐貴久さんの『TVJ』のような派手な作品でした。しかし、確かに「劇場型捜査」に違いないけれど、少々期待はずれ。この『犯人に告ぐ』は「週刊文春で2004年の1位だった」という事実があるだけに、期待も大きかったのですが。
「劇場型捜査」というのが売りなのですから、そこに専念したらよかったのではないかと思うのですが、そこに県警組織内での暗闘というか裏切りというか、そういうものが入ってきてしまいます。しかも比重大きく。よって、『巻島vs犯人(=バッドマン)』という図式よりも『ニュースナイトアイズvsニュースライブ』あるいは『巻島vs植草』という脇道が太くなり、肝心の「劇場型捜査」がかすんでしまうのです。
また、連続児童殺害事件と以前の児童誘拐殺害事件が有機的につながっているように思えないのも残念。この辺に「実は・・・」なんてサプライズがあるとおもしろかったように思うのですが。
おもしろくなかったとは言えないけれど、もっとおもしろくできたのでは。やっぱり期待が大きかっただけに残念な気がします。
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