道尾秀介『向日葵の咲かない夏』
一学期の終業式の日、小学四年生のミチオはクラスで仲間はずれにされているS君の家へプリントを届けに行く。だが、そこで見たものは首を吊って死んでいたS君だった。ミチオは学校に戻り先生に報告するが、先生と警察がS君の家へ行くと、死体は消えていた・・・
『背の眼』で第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞した道尾秀介さんの受賞後第一作。『向日葵の咲かない夏』というタイトルからは、非常にリリカルなものを予想していたのですが、ちょっと予想していたのとは異なるものでした。いや、ちょっとじゃないな。はるかに異なる感じ。これもリリカルと表現できるかもしれないけれど、期待していたものではありません。
あまり突っ込んであらすじを書くとなんでもネタバレになってしまいそうな作品。
さすがにホラーサスペンス大賞特別賞を受賞されただけのことはあって、物語を読ませます。続きが気になって、ページを繰る手が止まらないとはこのこと。ミステリとして読んでも、次々と新たな事実や証言が出てきて、そのたびに突き崩されていく推理の楽しさが詰まっています。ただ、紆余曲折というよりもただひたすら片方へ旋回し続けていくような感覚ですが。
ということで、道尾秀介という作家の実力を見せつけた作品です。がしかし・・・なんなんですか、この黒さは、この後味の悪さは、この不条理は。取り扱った事件の状況、登場人物の言動等々、物語の節々から感じられる嫌な予感は膨張を続けながらラストへとなだれ込み、そこで遂に大爆発してしまった模様。すごい。けれどキライ。生理的にちょっと受け付けないのです。
きっとこの作品に諸手を上げて大絶賛、そんな人も多いでしょう。実力があることははっきりしていますが、僕が読みたい本ではなかったようです。
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