アンソロジー『名探偵は、ここにいる』

 かつて《スニーカー・ミステリ倶楽部》なるものがありました。角川スニーカー文庫のミステリ部門なわけですけど、米澤穂信という稀有な才能を発掘しておきながら、いつのまにかどこかへ消えてしまったのです。
 で、今回読んだ『名探偵は、ここにいる』はその中に組み込まれた《ミステリ・アンソロジー》の第1弾。当時の角川スニーカー文庫では考えられなかったような顔ぶれが《名探偵》というテーマで書いた短編が揃っています。


太田忠司 「神影荘奇談」
 若者が持ち込んできた話は、1年前に山奥の洋館で起きた不思議な出来事だった・・・狩野俊介シリーズ。怪奇小説的な味付けの濃さが真相とのギャップを際立たせています。
鯨統一郎 「Aは安楽椅子のA」
 聴力を失いながら探偵事務所に勤めるアンナ。クビを賭けて死体の首を捜すが、聞こえるはずのない声が聞こえてきて・・・真の安楽椅子探偵もの。これを受け入れられれば楽しい作品です。
西澤保彦 「時計じかけの小鳥」
 久しぶりに立ち寄った書店で購入した本には書き込みがあった。どうやら母のものらしい。そこから過去の出来事の真相が・・・なかなかの読後感の悪さ。仮説の構築と崩壊の繰り返しがおもしろい。ってこれ名探偵じゃないじゃん。
愛川晶 「納豆殺人事件」
 大阪生まれの男の死体を解剖すると、胃の中から出てきたのは大量の納豆だった。彼の納豆嫌いは有名で・・・嘘のような謎を強引にこねくり回して真相にたどり着かせた印象。やや不自然な感じがしました。ちなみに根津愛シリーズの番外編?


 全体的にやや小粒な作品が揃った印象。短編だから仕方ないかもしれません。「これっ!」という作品が見当たらないのが残念です。


収録作:太田忠司「神影荘奇談」/鯨統一郎「Aは安楽椅子のA」/西澤保彦「時計じかけの小鳥」/愛川晶「納豆殺人事件」
関連作:『血文字パズル

2006年5月25日読了 【5点】にほんブログ村 本ブログへ
名探偵は、ここにいる―ミステリ・アンソロジー〈1〉
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