石持浅海『BG、あるいは死せるカイニス』
昨夜、年末から読んでいた石持浅海さんの『BG、あるいは死せるカイニス (ミステリ・フロンティア)』を読了。
生まれたときは女性、そして優秀と認められた者だけが男性化する現代日本での物語。男性化候補の筆頭とされていた姉の優子さんが天文部の観測の際に殺された。しかも、この世界では考えにくいレイプ未遂のようなかたちで。はたして優子さんは誰に殺されたのか。そして優子さんが残した秘密と《BG》とは。
東京創元社の「ミステリ・フロンティア」として刊行された作品。西澤保彦さんを髣髴させるようなSF的な設定なのですが、複雑になりすぎず、非常に消化しやすいような設定でした。
また、最終的に優子殺しの犯人の謎が、この男性化する世界の設定と密接につながっていて、設定が生かされています。
ただ、ややご都合主義的な展開かなと思わないでもありません。たとえば、あまりにも警察の捜査がおざなりで道化のように扱われていたりするとか。『水の迷宮』『扉は閉ざされたまま』と傑作を読んできただけに、石持さんについては例え旧作でもより高度なレベルを要求したくなりますので、そのへんは残念でした。それに加えて、解決への過程で登場人物たちの発言の端々をとらえてヒントにすることが多く、憶測的な推理が展開されているという不満が残ってしまいます。
とにかく、この作品は設定がすべて。この設定が気に食わない、性に合わないということならとにかく、設定を受け入れることができれば楽しめる気がします。
【感想拝見】
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