石持浅海『扉は閉ざされたまま』

 夏休みに入って石持浅海さんの『扉は閉ざされたまま [ 石持浅海 ]』を読了。


 高級ペンションで開かれた大学の同窓会。伏見亮輔は事故を装って新山和宏を殺害することに成功した。すべては計画通りの密室殺人。やがて食堂に集まる時間になり、「どうせ寝不足と花粉症の薬のせいで眠りこけている」と仲間たちは思っていたが、1人碓氷優佳だけは疑問を抱いていた。それは2人の頭脳戦の始まりだった・・・


 殺害シーンから始まる倒叙推理の傑作。殺害現場の新山の部屋は鍵やドアストッパーで物理的な密室になっているのと同時に、精神的に開けられない空間になっていて、中に立ち入ることなく推理するという非常に変わった形式です。こういう変わった空間をつくるのは非常にうまいですよね。
 そして、殺人の動機とそれが密室殺人でなければならなかった理由が密接につながっていて、その場所がこの高級ペンションでなければならなかったことがよくわかります。ただ、やはりこの動機で殺人を犯さなければならなかったのかと言われると疑問が残ります。説明がつく動機ではありますが。


 また伏見と優佳の頭脳戦は、伏見が他の仲間を計画的にミスリードしようとし、ほぼそのとおり進む中で優佳だけがその齟齬を突いて修正し、結果として伏見を追い詰めていきます。徐々にミスが明らかになり伏見が追い詰められていくさまには参りました。


 石持作品はまだ2作しか読んでいませんが、どちらも一風変わった閉鎖空間ものでおもしろかったです。

2005年8月12日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
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扉は閉ざされたまま (ノン・ノベル)
扉は閉ざされたまま (ノン・ノベル)石持浅海
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おすすめ平均 star
starゼロ時間へ
star何で買ったのか
starこんなクローズドもありですね
starsぎこちない
stars実に巧妙な作品だ

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