北森鴻『桜宵』
北森鴻『桜宵』を昨夜読了しました。
ビアバー「香菜里屋」シリーズの第2短編集。マスターである工藤が、常連たちを取り巻く謎を解いていきます。
以下、各編について。
●「十五周年」
故郷の居酒屋の15周年パーティー。しかし、知った顔もなく、居心地も悪い。故郷を離れた自分がなぜ招待されたのか・・・ほんわかとした仕組みです。
●「桜宵」
亡くなった妻からの最後の手紙。最後のプレゼントは「香菜里屋」。桜飯に託された妻の想いは・・・感動を誘う作品です。
●「犬のお告げ」
人事部長の愛犬?に噛まれたらリストラという恐怖のホームパーティー。いよいよ自分のところにも招待状がやってきたが・・・人間の隠された思惑というのは恐ろしいものです。
●「旅人の真実」
香菜里屋に突然やってきて「金色のカクテル」を依頼し、それに満足せず捨てぜりふを吐いて去っていく男。それは香菜里屋に限った話ではなかった・・・頼れる男の悲劇的な結末です。
●「約束」
工藤が助っ人に入った小料理屋「千石」にベストセラー作家の土方と古い知り合いの女性がやってきた。聞くと、二人は10年ぶりの再会で、「千石」は昔の旅の思い出だというが・・・締めくくりにインパクトの強い作品。悪意の極み。
5つの短編が読み進めるにつれて、徐々に後味の悪いものになっていきます。最後に読んだ「約束」の印象が強いためでしょうか。明らかになる真実は、やはり悲しいものよりも明るいもの、幸せなものの方が良いですね。
基本的には安楽椅子探偵の形体をとっているためかやや論理に飛躍があるのですが、それが前作よりも少し強引な気がしました。もちろん、そこは短編の名手、きれいにまとめられています。
それにしても、登場する料理がとても美味しそう。これも読みどころですね。
収録作:「十五周年」「桜宵」「犬のお告げ」「旅人の真実」「約束」
関連作:『花の下にて春死なむ』『螢坂』
- まあぼの交差点さま(2005.04.07追加)
桜宵 | |
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