有川浩『植物図鑑』
「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか」行き倒れた青年の一言がさやかをひきつけた。家事全般を得意とする青年・イツキは家事手伝いとして居候する。中でもイツキが得意なのは料理。旬の野草を使ったさまざまな料理に、そしてイツキにさやかは惹かれていった・・・
――あらやだ。けっこういい男。
ってそんなに簡単でいいのか、と突っ込みたくなる出会いから始まったさやかとイツキの関係。
前半はとにかくじれったい。ふたりが親密になっていくのはよくわかるのですが、もっぱら野草と料理の話が中心。もしかしたらこのまま野草を摘んで料理して食べて終わるのかと思ったくらい。でも、この野草と料理に関する話がまたおもしろいのです。天ぷらにしてもパスタにしても本当においしそう。思わず植物図鑑、買いたくなりそうです。できればレシピ付きで。
中盤から後半は物語が進んで、あれよあれよと一気読みでした。ノイチゴのジャムのように甘いのもいいかもしれませんが、健気に耐え続けるさやかの姿には思わず涙しそうでした。でも、有川さんだから必ずハッピーエンドにしてくれます。
ところで、ツクシってもうそんなに見られなくなってしまったのですか。我が家ならほんの数分歩けばツクシもタンポポもたくさん見られるのですが。食べるかどうかは別として。さやかのような都会の人にとっては、見たことないのが普通なのかな。
作品中に何度も出てくる「雑草という名の草はない」という言葉が胸にしみます。すべての生き物には生命と名前があることを諭されているようで。イツキが必要なだけしか狩りをしなかったり、アカザを残しておくのも、そんなところと繋がっている気がします。
【感想拝見】- ひなたでゆるりさま(2009.10.09追加)
- booklines.netさま(2009.10.09追加)
植物図鑑 | |
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