松田志乃ぶ『嘘つきは姫君のはじまり 恋する後宮』

 主人である馨子と入れ替わって、御匣殿別当として後宮にあがることになった宮子。個性の強い女性たちに圧倒される日々だったが、東宮妃候補筆頭の鳩子と「もの合わせ」なる一大イベントで勝負することになってしまった。そこには権力争いが絡んでいて・・・


 この物語の中心は、馨子の身代わりで姫として振る舞う宮子の悲喜劇です。今回はまさにそのど真ん中で、後宮にあがった宮子が東宮である次郎君のお妃争いに巻き込まれ、しかもあれよあれよという間にその中心にされてしまいます。
 そのお妃争いですが、何せ女性ばかりの5対5。誰が誰だか、というようになりがちなところなのですが、王族と藤家の勢力争いを背景に解りやすくまとめられ、読み手を煩わせません。また、ここでのやりとりは背景にある勢力争いを忘れてしまったかのような、楽しく気持ちのよいものでした。ドロドロした女の争いではないのがいいですね。なかでも馨子(和泉の君)と宣旨の君とのやりとりは見ものです。


 さて、今回扱われた事件は放火。しかも連続放火。これが「もの合わせ」と巧みに絡められ、とても効果的です。その真相が持つ切なさを増幅するのに一役買っていると言ってもいいでしょう。小粒でちょっと脇に寄せられたような感じかもせれませんが、しっかり効いています。
 ところで、宮子をめぐる男たちのほうはこの結果をどう見るべきなのでしょう。宮子の想いどおりすんなりいくのか、それともまだ一山二山あるのか、これからも注目ですね。


関連作:『嘘つきは姫君のはじまり ひみつの乳姉妹』『嘘つきは姫君のはじまり 見習い姫の災難

2009年3月25日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
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