連城三紀彦『造花の蜜』
それは、考えられないような誘拐事件だった。幼稚園からの緊急の連絡を受け、圭太を迎えに行った母香奈子に対し、担任はこう言ったのだ。
「だって、私、お母さんに……あなたにちゃんと圭太クン渡したじゃないですか」
すごいすごいという評判は聞いていたけれど、本当にすごかった!
とにかくトリッキーな作品です。誘拐犯が警察の目をくらますために策を弄するなどというレベルではありません。身代金を要求せず、父親を名乗り、本人が望めばいつでも帰すとまで言いだすあたり、明らかに普通の誘拐とは違うとわかります。ですが、これほどのものとは想像できませんでした。
最初から最後まで、読者の意表を突くどんでん返しの連続。どこからどこまでが確定した真実なのか、わからなくなってしまうほどです。被害者家族をはじめ、登場人物のほとんどが、怪しく何かしらの裏がありそうな人物ばかり。それだけに、自分が今読んでいる話を信じていいのか疑ってかかるべきなのかという思いが助長させられますが、それこそ作者の思惑通りですね。
連城さんの作品は初めて読んだのですが、他のミステリ作品もこういったどんでん返しが炸裂するようなものが多いのかな。まずは噂に聞く花葬シリーズとか読んでみたくなりました。
あえて難をあげるとすれば、最終章がなくてもいいと思われることでしょうか。ここでもあっと言わせてくれますが、物語全体としてはその前で終わったほうがよりきれいでしょう。もっとも、「あったほうがいい!」って声も十分ありそうな気がします。
これほどの作品が奥付の関係で各種ランキングにほとんど上がってこないというのは残念。もっと多くの方に読んでほしい一冊です。
- COCO2のバスタイム読書さま(2009.01.30追加)
造花の蜜 | |
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