アンソロジー『気分は名探偵』
昨年「夕刊フジ」に連載された犯人当てアンソロジー。我孫子武丸、有栖川有栖、霧舎巧、貫井徳郎、法月綸太郎、麻耶雄嵩という、想像するだけでわくわくするような豪華な執筆陣です。
でも、僕の場合普段ミステリを読むときに犯人を当ててやろうとか、トリックを解いてやろうとか、そういうことはあまり考えていないんです。それでも今回に限っては少しは当てようと思っていたのですが、全くダメ。かすりもしません。『気分は名探偵』というより『気分は迷探偵』です。
当てられなかったことは棚上げして、各編の感想。
●有栖川有栖「ガラスの檻の殺人」
シンプル。犯人当ての懸賞小説は普段からミステリを読んでいる読者ばかりとは限らないので、このくらいシンプルなほうがいいのでは。
●貫井徳郎「蝶番の問題」
正解率1%。ポイントを把握することはできたものの、そこから犯人を導き出せなかった。もう少し正解率が高くなりそうだが。
●麻耶雄嵩「二つの凶器」
ちょっと長かったことと、意外に正統派だったことがひっかかった。
●霧舎巧「十五分間の出来事」
読み慣れていない読者にはとっつきやすいかもしれないけれど、完成度で一段落ちる気がする。先入観のせい?
●我孫子武丸「漂流者」
犯人当てならぬ人物当て。設定としては良くあるかもしれないが、捻りのきき具合と明快な解答は秀逸。
●法月綸太郎「ヒュドラ第十の首」
期待通りの正統派。伏線をしっかり拾うことができれば、解答まで遠くない。正解率28%もうなずける。
懸賞つきの犯人当てであることを考えれば、あまり難しすぎるのは問題ではないでしょうか。そういう点では正解率1%の「蝶番の問題」はやはり難しすぎたかもしれません。個人的には一番楽しかったのですが。
全体を通して考えれば、やはり本気で犯人当てをするなら集中力が必要だなとあらためて実感。
眠かったり、疲れていたり、問題の途中で中断したりと読んでいるときの状態にもよりますが、集中しなければ解けないのは事実。
そういう意味で、「二つの凶器」を読むときはちょっと状態が悪く、別のときにしっかり読めばもっと違った感想を持ったかもしれません。
ちなみに巻末の覆面座談会、こちらのほうが本編よりもずっと当てやすいですね。
収録作:有栖川有栖「ガラスの檻の殺人」/貫井徳郎「蝶番の問題」/麻耶雄嵩「二つの凶器」/霧舎巧「十五分間の出来事」/我孫子武丸「漂流者」/法月綸太郎「ヒュドラ第十の首」
気分は名探偵―犯人当てアンソロジー | |
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