貫井徳郎『被害者は誰?』

 ある大邸宅の庭から白骨化した死体が掘り出された。家主は殺人をしたことは認めたが、その死体が誰なのかという点については黙秘を貫いている。困った捜査一課の桂島刑事は大学の先輩である吉祥院慶彦に相談した。美貌の超人気ミステリ作家であることに加えて、優れた推理能力を持つ彼は、残されていた古い手記から思いがけない結論を導き出した。(「被害者は誰?」


 重厚な作風で知られる貫井さんのコミカルな作品集。各編のタイトルにあるように、一応フーダニット。通常のフーダニットとは違って「犯人当て」ではないのですが、必ずしも奇をてらうようなものではなく、基本はオーソドックスなもの。そこをちょっとひとひねり、といったところでしょうか。実際、表題作なんてそれこそ使い古され手垢のついたような仕掛けでしょうが、全く気づきませんでした。伏線もきっちり張ってあるのに。
 また、「探偵は誰?」では、吉祥院が過去に解決した事件を小説化した作品として作中作が登場します。これが「嵐の山荘」ものの犯人当て。すなわち探偵当てと犯人当てを1作の中で行う設定です。どちらかといえば作中作の犯人当てがなかなかおもしろかったです。まあ、変則フーダニット集の作中作である犯人当てをおもしろいと評価してしまうのも我ながらどうかと思うのですが。

 
 ところで、ここまで書いて気づいたのですが、貫井さんは本作『被害者は誰? (講談社文庫)』のノベルス版の惹句「究極のフーダニット」に対して『フーダニットじゃない話ばかりを集めた連作集なのに(笑)。』と記されています。(貫井さんの公式サイト『He Wailed』2003年5月3日のRECENT TOPICSより)
 ということは、僕が考えていたフーダニットって間違っていたのでしょうか?


収録作:「被害者は誰?」「目撃者は誰?」「探偵は誰?」「名探偵は誰?」

2006年5月22日読了 【6点】にほんブログ村 本ブログへ
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