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真保裕一『天使の報酬』

サンフランシスコで発生した女子大生霜村瑠衣の失踪事件。彼女の父は厚労省の元官僚で、そのパイプを使って領事館に娘の捜索を依頼してきたのだ。彼女が行動を共にしているとみられるボリビアからの留学生ロベルトは市警からテロ関係者として疑われている。…

アンソロジー『放課後探偵団』

1980年代生まれのミステリ作家が集まった。まさに新しい時代を担う才能の持ち主である。そんな彼らに課された競作。舞台は学園・・・ 彼らの作品がコンスタントに出版されれば、ミステリ界の先行きは明るい、なんて思わせてくれる学園アンソロジー。 ●似鳥鶏…

初野晴『空想オルガン』

いよいよ普門館への第一歩を踏み出したハルタやチカたち。まずは地区予選から。弱小吹奏楽部はいったいどこまで歩を進めることができるのか・・・ 『退出ゲーム』『初恋ソムリエ』に続くシリーズ第3弾。なんでも「ハルチカシリーズ」という名前がついている…

七河迦南『アルバトロスは羽ばたかない』

七海西高校の文化祭の最中、校舎屋上からの墜落事件が起きた。美術部の展示が行われていた屋上へ上がった人物は数名に限られている。わたしは、春、夏、初秋、晩秋に起きたいくつかの出来事を振り返りながら、屋上ではいったい何が起きたのか、考えていこう…

鯨統一郎『タイムスリップ紫式部』

古典の授業中、教師に鞭で打たれた本間香葉子は、そのショックで平安時代にタイムスリップしてしまった。しかも、「源氏物語」の作者・紫式部の身体に宿ってしまったのだ。とんでもない出来事に対応できず、紫式部として過ごす香葉子だが、四阿で時の権力者…

石崎幸二『記録の中の殺人』

5人の女子高生の死体が、左脚と左腕が切断された状態で一ヶ所で発見された。彼女たちの共通点は誕生日。やがて同じように再び5人の死体が発見されるが、そのうち1人も前の5人と同じ誕生日。ユリ、ミリア、仁美そして石崎のミステリィ研究会は、殺人鬼からの…

汀こるもの『動機未ダ不明 完全犯罪研究部』

古賀の「生きる目的」のために「ゼロ年代探偵小説研究部」として復活した完全犯罪研究部。表の名前は変わっても、部室がせまくなっても、やることに変わりはない。裏活動として様々な事件に首を突っ込むうち、またしてもとんでもない状況に行き着いてしまい…

汀こるもの『完全犯罪研究部』

ミステリについて語り合う、「推理小説研究部」なんて仮の姿。校内の犯罪や悪事を探り、知識と技術で対抗する。殺人事件だってどんとこい。自慢の暗器でイチコロだ。そんなまじめにふざけたような彼らの名は「完全犯罪研究部」・・・ これはまたとんでもない…

三木笙子『世界記憶コンクール』

『記憶に自信ある者求む』という広告に応募した質屋の跡取り博一。無事採用され、高い給与を受け取りながら、記憶力の向上に励んでいた。だが、主催者側と連絡が取れなくなった博一は、悪事に関与させられたのではないかと不安を覚え高広に相談したのだ。強…

三木笙子『人魚は空に還る』

至楽社の記者里見高広は、帝都一と呼ばれる天才絵師有村礼と奇妙な関係にあった。高広が入手する「ストランドマガジン」に掲載された「シャーロック・ホームズ」を訳し伝えることで、礼が表紙絵を描くというのだ。高広は前日の続きと現実の謎解きを要求され…

大崎梢『背表紙は歌う』

明林書房の営業マン・井辻智紀は、前任者吉野の後をついで担当の書店回りをしている。智紀は目の前に立ちはだかる書店や出版にまつわる謎を、同業の営業マン・真柴や仲間の力を借りながら解き明かしていく・・・ 『平台がおまちかね』に続く、〈出版社営業・…

七河迦南『七つの海を照らす星』

諸々の事情により家庭で暮らすことができない児童、生徒が寝食を共にする児童養護施設「七海学園」。勤務二年目の春菜は、中二の葉子に係る話に手を焼いていた。葉子には亡くなった問題児の霊がとりついていると噂されているのだ。仕方なく春菜は児童相談所…

庵田定夏『ココロコネクト カコランダム』

黒板に書かれた太一以外の4人の名前と「12時〜17時」の意味を知ったとき、文研部のメンバーたちは衝撃を受けた。12時ちょうどに、伊織と唯が子供に戻ってしまったのだ。同じ現象は稲葉と青木にも。ひとりだけ子供に戻らない太一だったが、彼には別の試練が待…

我孫子武丸『さよならのためだけに』

新婚旅行から帰ってきたふたりは、新居に着くとたちまち喧嘩になった。そもそも新婦の月(ルナ)には新郎水元への愛情なんてなかったのだ。ふたりはPM社のマッチングで特A判定が出たベストな組み合わせのはずだったのに。離婚を迫るルナだが、そう簡単にはい…

近藤史恵『あなたに贈る×(キス)』

唇を合わせることで感染する不治の病、ソムノスフォビア。全寮制の学園リセ・アルビュスで女生徒が亡くなり、やがて発覚した死因は学園中を震撼させた。亡くなった織恵に憧れていた美詩は梢から織恵を感染させた相手が学園内にいることを知らされ、犯人探し…

河野裕『サクラダリセット 3 MEMORY in CHILDREN』

相麻菫は問いかけた。「私たちの中に、アンドロイドがいると仮定しましょう」と。未来視の能力を持つ彼女が浅井ケイに投げかけたその問いはどんな意味を持つのか。そしてその答えは。ケイはリセット能力を持つ春埼美空と出会い、三人は考え始めた。二年前の…

竹宮ゆゆこ『ゴールデンタイム1 春にしてブラックアウト』

大学に合格して上京した多田万里は、入学早々、奇妙な出会いをした。会場で意気投合した柳澤光央、そして柳澤を追って来た彼の幼馴染加賀香子と。完璧なお嬢様であるのと同時に、香子は思いこみ激しく柳澤を追い続けるストーカーもどきなのだ。柳澤は香子を…

ジョー・ウォルトン『バッキンガムの光芒 ファージング3』

英国版ゲシュタポである監視隊《ザ・ウォッチ》の隊長となったカーマイケル。彼はロイストンの娘エルヴィラの後見人となっていた。遜色ない学歴と後見人を持ちながら、彼女はその生い立ちから社交界になかなか受け入れられない。友人ベッツィの手助けもあり…

ジョー・ウォルトン『暗殺のハムレット ファージング2』

名門ラーキン家の三女ヴァイオラは、ロンドンで女優として活躍している。彼女がつかんだ役は、男女を取り換えた「ハムレット」での主役、女ハムレット。しかも、来英するヒトラーが観劇予定だという。だが、ガートルード役だったローリア・ギルモアが爆弾に…

真木武志『ヴィーナスの命題』

夏休みに入って間もないある朝、グラウンドでひとりの生徒が遺体となって発見された。状況では校舎の窓から転落したようだが、自殺なのか他殺なのか事故なのかはっきりしない。学校の呪いという説もある。様々な立場にある17歳の高校生探偵たちは一斉に走り…

野村美月『“文学少女”と穢名の天使』

遠子先輩が受験勉強に専念するため文芸部を休部すると言い出した。考えてみれば、受験生なのだから当然のことだ。一抹の寂しさを覚える心葉だったが、ななせの親友水戸夕歌が姿を消してしまったことを知り、ふたりだけで夕歌の行方を追うことに・・・ 受験と…

貫井徳郎『明日の空』

帰国子女の栄美は、日本で高校生活を送ることになった。なかなか日本の風習には馴染めなかった栄美だったが友達もでき、やがて飛鳥部という男子生徒に思いを寄せる。だが、いざ彼とデートの約束をしても、かならず何かしらの障害があって彼に会うことができ…

辻村深月『光待つ場所へ』

悔しさ、恥ずかしさ、いたたまれなさ。そんな誰もが味わう感情の動き。完膚なきまで打ちのめされたあのとき、自分の存在が否定されたようだったあのときがよみがえる・・・ 『ロードムービー』に続くスピンオフ短編集。今回も思いもよらぬあの人との再会が待…

石持浅海『この国。』

開国以来、一党独裁体制で長く安全を享受してきた「この国」。常に戦争を避け、ひたすら経済大国への道を歩んできた国ではあるが、安全の維持のためにこの国にもふたつの組織がある。ひとつは国民の日常生活を守る治安警察、もうひとつは他国と相対する可能…

野村美月『“文学少女”と繋がれた愚者』

遠子先輩が図書館で借りてきた一冊の本。その異常を先輩が発見したとき、事件は明らかになった。「ああっ、この本ページが足りないわ!」。何者かが数ページにわたって本を破り、持ち去ったのだ。先輩の手にある本は無残な姿を晒している。はたして、誰が、…

加藤実秋『インディゴの夜 Dカラーバケーション』

風営法が改正され、その影響でclub indigoも二部制を敷くことになった。従来の営業は夜間の第一部、昼間の第二部は新人中心のショーパブ形式という具合に。だが、一部と二部のホストたちの間にはノリや雰囲気の違いがあり、溝が明らかになっていった・・・ …

川原礫『アクセル・ワールド 5 ―星影の浮き橋―』

《軌道エレベータ》に《ソーシャルカメラ。ネットワーク》が導入される。そんなニュースを聞いたハルユキはひとつの思考に行きついた。加速空間が宇宙まで広がるという可能性に。その方向性に間違いはなく、ハルユキたちは新たな《宇宙》ステージでの《ヘル…

ジョー・ウォルトン『英雄たちの朝 ファージング1』

ナチスドイツと講和したイギリス。ルーシーは、その講和を主導したグループ〈ファージング・セット〉に属する貴族院議員の娘だが、大陸では迫害されているユダヤ人のカーンを夫とし、家庭内でも微妙な立場に。ファージングで開かれたパーティーの翌朝、有力…

川原礫『アクセル・ワールド 4 ―蒼空への飛翔―』

略奪者ダスク・テイカーに飛行アビリティを奪われてしまったハルユキ。失意の日々を乗り越え、新たな能力を手に入れてタクムとともにダスク・テイカーを追い詰めたのだが、待っていたのは驚愕の事態。はたしてハルユキはこの事態にどう対処するのか・・・ 上…

川原礫『アクセル・ワールド 3 ―夕闇の略奪者―』

進級したハルユキの前に現れた新入生能美。彼はハルユキにゲームオーバーを宣告した。《ブレイン・バースト》のマッチングリストにも現れず、それでいて《加速世界》を自由に使いこなす彼は、デュエル・アバター《ダスク・テイカー》としてハルユキの大切な…