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綾辻行人『Another エピソード S』

 異能の少女見崎鳴が語ったのは、あの一週間に起きた不思議な出来事。この夏彼女は海辺の町で幽霊と出会っていた。しかも、記憶を失った幽霊とともに、彼自身の死の謎と、彼の死体を探し求めたという。幽霊・賢木晃也は、11年前に夜見山北中学3年3組の修学旅行で起きたバス事故での生き残りだった・・・

 これはひと夏の爽やかなホラー・ストーリー。幽霊も登場するし、登場人物も亡くなるけれども、決して怖かったりおそろしかったりする話ではありません。その点では、少々不満があるかもしれません。括りとしてはホラーなのでしょうが、ファンタジーとかの方がイメージには近い感じ。何かいいジャンル分け、ないかな。
 とにかく先へ先へと読み進めたくなる展開で、あっという間に真相に到達してしまいます。ただし、謎解き云々という物語ではないので、『Another』のようなミステリとホラーを融合させた傑作を期待すると残念な結果になるかも。同じ世界観にあっても、あくまで『Another』は『Another』、『エピソード S』は『エピソード S』といったところでしょうか。見崎鳴というキャラクターと、夜見山北中学の不思議な悲劇を活かして、見事なほど異なる雰囲気に仕上げています。次にどんなエピソードが発表されてもおかしくないでしょう。
 もっとも、読者がどんなジャンルのイメージを持とうが、この作品が『Another』を既読の読者を想定していることは明白。説明不足というのではありませんが、あの災厄のことなど既読でなければわかりにくい部分がちらほら。いや、既読の方がより楽しめるという方がいいのかな。
 作品中には様々な伏線が張られ、さすが熟練の匠というところです。このあたりはミステリのテクニックなのでしょうね。するすると読むことができる作品ですが、それ故に二度三度と読み返し確認したい作品と言えます。一読しただけでは肝心な部分を欠落させてしまいそうです。そう、誰かのように。


関連作:『Another

2013年10月22日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
Another エピソード S (単行本)

Another エピソード S (単行本)

 Another(エピソードS) [ 綾辻行人 ]