法月綸太郎『キングを探せ』
夢の島、イクル君、りさぴょん、カネゴン。奇妙な名前で呼び合う四人の共通項は殺意。それぞれに殺したい人物がいる四人は、互いに相手を変えて殺害することで手を結んだ。この四重の交換殺人に挑むのは、もちろん法月警視と綸太郎。ふたりはこのトリックを見抜けるのか・・・
久々の書き下ろし作品。
いわゆる交換殺人ものなのですが、その交換が半端ではありません。なんと四重の交換殺人。しかも、その決め方としてトランプを介在させているので、作中の捜査側、そして読者にとっては余計に複雑に見えるつくりです。その様々な見せ方、出し方が実に巧みで、ラストシーンでの驚きを演出しています。
また、犯人側と捜査側の頭脳戦という一面もあり、そこもまた見ものです。特に、少しずつ交換殺人の全体像が見えてきてからの攻防は注目です。
読み返すと、一読ではバラバラに見えるそれぞれの殺人がしっかり繋がってきます。もちろん知っているからなのですが、ちょっと違ったものに見えてきて、非常におもしろいものです。何も気にならなかった行動のひとつひとつが持っている意味が、はっきりと見えてきます。
どちらかといえば、長めの中編という感じの作品ですが、細かいところまで丁寧に書かれ、きれいにまとめられたミステリです。シリーズ中最高傑作かもしれません。今年の各種ランキングで、どこまで上位に入るかな。
関連作:『雪密室』『誰彼』『頼子のために』『一の悲劇』『ふたたび赤い悪夢』『法月綸太郎の冒険』『二の悲劇』『法月綸太郎の新冒険』『法月綸太郎の功績』『生首に聞いてみろ』『犯罪ホロスコープ 1 六人の女王の問題』
- 作者: 法月綸太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/12/08
- メディア: 単行本
- 購入: 3人 クリック: 37回
- この商品を含むブログ (56件) を見る