千澤のり子『マーダーゲーム』

 杉田の提案で、人狼ゲームをもとに学校内で「マーダーゲーム」を始めた子どもたち。自分のスケープゴートとして嫌いなものを校内に隠したのだが、なぜかゲームを超えた事件が発生する。ウサギは殺され、女子生徒の髪が切られた。エスカレートしていく事件に、子どもたちは疑心暗鬼に陥っていく・・・


 連続で読みましたが、こちらが千澤のり子さん初の単著。「汝は人狼なりや」をもとにした「マーダーゲーム」によって起こる事件に巻き込まれていく物語です。
 序盤で説明されるこの「マーダーゲーム」のルールが何とも分かりにくく苦労をしたのですが、そこを通り過ぎればあとは割合すんなりと読むことができました。もっとも、大筋だけ掴んでおけばよい部分かもしれません。というか、私自身正直このルールはあまりよく理解できませんでした。
 ゲームという題材を使いながら、それがあまり活かされていないというのは本当に残念で、もったいないことです。もちろん、このゲームなしには成立しない物語であり、起こりえない事件なのはわかりますが、使い捨てのような形なのが惜しいです。


 視点人物が度々入れ替わるわりに、登場人物のキャラが立っていないのも残念なところ。ここがはっきりしていれば、もう少し読者のリーダビリティを上げることができたのではないでしょうか。


 それはともかく、秀逸だったのはやはり見せ方でしょうか。登場人物に対して、あるいは読者に対して何を隠し、何を見せるのか、これが最後までうまくいくことで、ひとつの作品世界を成し得たように見えます。

2012年1月27日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
マーダーゲーム (講談社ノベルス)

マーダーゲーム (講談社ノベルス)

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