三木笙子『人魚は空に還る』
至楽社の記者里見高広は、帝都一と呼ばれる天才絵師有村礼と奇妙な関係にあった。高広が入手する「ストランドマガジン」に掲載された「シャーロック・ホームズ」を訳し伝えることで、礼が表紙絵を描くというのだ。高広は前日の続きと現実の謎解きを要求される日々が続く・・・
腰の低いホームズと高飛車なワトソンによる帝都探偵譚。
●「点灯人」
行方不明の兄を捜す広告を載せてほしいと至楽社に少女がやってきた。彼女の兄は広告図案で一等をとった少年だった・・・第2回ミステリーズ!新人賞最終候補作。話の広げ方とその方向が巧みです。彼を捜し出すだけで終わらないのがいいですね、
●「真珠生成」
銀座の美妃真珠から三粒の「プリンセス・グレイス」が消えた。うち一粒は金魚鉢の中から見つかり騒動に・・・時代性と人間の心がよく結びつけられた作品。意外性というよりも人情もののような趣きがあります。
●「人魚は空に還る」
見せ物小屋に登場した人魚は大人気に。だが、興業後には悲惨な出来事が待っていた・・・これはきれいだったなあ。なんだか風景が頭に浮かびあがってくるかのようでした。
●「怪盗ロータス」
世間を騒がす怪盗ロータス。彼の今度の標的は、洋画をコレクションしている富豪の大黒だ・・・睡蓮小僧が一枚上手だったでしょうか。またの対決があれば楽しみなのですが。
BL風の表紙で、イマイチ手を伸ばしにくかった作品集。礼と高広であれば通常ならば礼が探偵役のキャラクターでしょうが、それをひっくり返したことでちょっと色合いの異なるものに仕上がった気がします。ただ、礼はあまり役に立っていないような。まあ、礼に謎解きを強要された高広が義父や編集長といった人脈を駆使して解決するといった感じですね。
収録作:「点灯人」「真珠生成」「人魚は空に還る」「怪盗ロータス」
- 作者: 三木笙子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2008/08
- メディア: 単行本
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