近藤史恵『あなたに贈る×(キス)』
唇を合わせることで感染する不治の病、ソムノスフォビア。全寮制の学園リセ・アルビュスで女生徒が亡くなり、やがて発覚した死因は学園中を震撼させた。亡くなった織恵に憧れていた美詩は梢から織恵を感染させた相手が学園内にいることを知らされ、犯人探しを始めたのだが・・・
感染症により「キス」がタブーとなった近未来の物語。
犯人探しといっても、死因の特徴から当然《織恵にキスしたのは誰か?》ということになります。
「唇を合わせることで感染する」ことを含めたソムノスフォビア特有の性質、作品内外の倫理観や常識、そして登場人物たちの考え方や思い込みといったものがきれいにはめこまれています。真相を巧みに隠していて、読んでいても右へ左へと作者に揺さぶられ続けているような感覚でした。
ラストでたどりつく真相はとても切ないもの。ちょっと唐突だった気もしますが、すべてが無駄なくしっかり繋がって導き出されたものに見えます。
最近でも新型のインフルエンザとか、簡単には克服できないような病気があるわけですが、ソムノフフォビアのような新たなウィルスも近未来には本当に登場するかもしれませんね。
若年者向けの「ミステリーYA!」ということなので、こういうミステリもあるんだよという例になればいいと思います。そして、できることならば若年層だけの読みものにはしたくないなあとも。
あなたに贈るキス (ミステリーYA!) | |
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