福田和代『プロメテウス・トラップ』
平凡なプログラマーとして生活する能條良明。彼はかつて「プロメテ」と名乗る天才ハッカーだった。FBIのサーバに侵入したことから収監された経験を持ち、それ故に静かに暮らしていたのだ。だが、彼の素性を知る謎の男が持ちかけた依頼により、「プロメテ」は復活、再びその能力を発揮することに・・・
あらすじからどれだけ高度な知識を駆使したサイバーサスペンスなのだろうかと身構えたのですが、実際のところはそれほど高いハードルは設けられず、さほど知識がない読者でも楽しめる作品でした。もっとも、予想以上に冒険サスペンス色を強く感じる作品で、そこは想定外でした。
ただ、限りなく長編に近いとはいえ連作短編集という形式のためか、全体が軽く見えてしまいます。ICチップ入りパスポートの偽造を扱った巻頭の「プロメテウス・トラップ」こそ、重々しい雰囲気と内容がちょうどいい具合で、どんでん返しでも楽しませてもらって非常に満足でした。しかし、そのあとは軽さが目立ってしまい、どうも作品の内容とはそぐわない印象が残りました。こういった謀略ものはもっと重々しさを強調した方がいいように見えます。
リーダビリティは高いので手軽に読めます。そういう意味ではライトな謀略サスペンスというのもありかなあとは思うのですが、個人的にはやはりズシリとくる方がいいかな。
プロメテウス・トラップ (ハヤカワ・ミステリワールド) | |
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