アンソロジー『Story Seller 3』
【読み応えは長篇並、読みやすさは短篇並】の『Story Seller』も3回目。そしてラスト。【面白いお話、またまた売ります。】
●沢木耕太郎「男派と女派 ポーカー・フェース」
旅先ではじめて体験する出来事、そこからはじまるストーリー・・・出会いというものは、人間に変化をもたらすものなのだと改めて思い知りました。前回の「マリーとメアリー」よりも今回の方が好きです。
●近藤史恵「ゴールよりももっと遠く」
チーム・オッジのエースとして活躍する石尾。アクシデントの裏にあるものは・・・決して気分が晴れるわけではありませんが、少しは溜飲を下げることができました。企業スポーツの負の一面ですね。
●湊かなえ「楽園」
雪絵が突然姿を消した。彼女が行った先は遠く海の向こう、トンガだった・・・今までの湊さんからは想像もできないような作品。今度はこういう路線の長編でもいいのではないかと。
●有川浩「作家的一週間」
作家は編集者とメールで連絡を取り合った。二日間で17回も。その内容は・・・ご本人の言葉どおりの脱力系。でも、半ばブラックユーモアのようで実際にありそうな不条理さ、怖さを抱えています。
●米澤穂信「満願」
出所したことを報告してきたのは、かつて弁護を請け負った女性。そして学生時代の下宿の奥さんだった・・・何を大切に思うか、その価値観は人それぞれ。最後の落とし方が見事でした。
●佐藤友哉「555のコッペン」
相席した女性が持っててきたものは、骨片が詰められた壺と警察による追跡だった・・・シリアスとユーモアがうまい具合に共生した物語。なんだかはぐらかされた気もしますが、このコンビがこれで終わってほしくないですね。
●さだまさし「片恋」
事故死した男が持っていたのは、免許証と名刺、そして私の連絡先だけ。でも私には心当たりがない・・・100ページ余りの中編。その中にいろいろなものを詰め込みすぎて、消化不良の感も。本筋がぼやけてしまった気がします。
唐突にラストを迎えた『Story Seller』。最大の収穫は予想できなかった「楽園」でしょうか。強烈なインパクトを残した「作家的一週間」、静かに鋭い「満願」もお気に入りです。
また違った形でも、こういった企画をやってもらえるとうれしいです。
収録作:沢木耕太郎「男派と女派 ポーカー・フェース」/近藤史恵「ゴールよりももっと遠く」/湊かなえ「楽園」/有川浩「作家的一週間」/米澤穂信「満願」/佐藤友哉「555のコッペン」/さだまさし「片恋」
関連作:『Story Seller』『Story Seller 2』
Story Seller (ストーリー セラー) Vol3 2010年 05月号 [雑誌] | |
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