静月遠火『ボクらのキセキ』
波河久則は近くの高校に通う三条有亜に一目ぼれした。だが、親密になるにつれ有亜の様子が変わっていく。なぜなら、久則が以前有亜にいたずらで未来の彼氏を装い、電話したことがあったのだ。自分たちが付き合うことで事件や事故を引き起こし、殺人まで犯してしまうと。ふたりの周囲では電話の内容通りの事件や事故が続いていく・・・
嘘が現実になってしまうライトサスペンス。おもしろい方向へ進んでいただけに、少々残念でした。
前半からおもしろかったのは久則と有亜の気持ちのずれでした。なんとか恋を進展させたい久則と事件を食い止めたい有亜。そのずれが久則の気持ちの空回りにつながっていくのです。かわいそうといえばかわいそうなのですが、自業自得ですよね。一番の原因は自分がかけたいたずら電話ですから。
登場人物は、イタ電をかけた久則もその件以外は印象も悪くないですし、有亜もヒロインとして好感が持てました。でも、いちばんいいキャラだったのは久則の従兄の正臣。いわゆる優等生っぽいのですが、久則を小馬鹿にしながらもちゃんと久則と有亜につきあって事件を食い止めようとします。頼りになる従兄なのです。
後半は少々残念な展開。嘘が次々に現実化されていく原因というのはこの物語のひとつの見所で期待していたのですが。なんだかすかされたというか、うまく逃げられたというか。もちろん、しっかり辻褄が合う形ではあったのですが、この点はちょっと期待はずれでした。
2冊読んでみて、いろいろなアイデアを盛り込んでおもしろくしていくタイプという印象を持ちました。期待を大きく持って、次回作を待ちます。
ボクらのキセキ (メディアワークス文庫) | |
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