紅玉いづき『ガーデン・ロスト』

 エカ、マル、オズ、さらにシバ。女子四人だけの放送部の面々は高校三年生になった。虚構と真実に揺れる春、他者との距離に悩める夏、自らに変化を求めた秋、そして次の道へ続く冬。季節は移ろい、四人だけの楽園は終わりへと向かっていく・・・


 「人喰い三部作」の紅玉さんの新作。レーベルが変わったためか、抱いていたのとはまったく異なるイメージの作品でした。


 登場するのはちょっとくせがある少女たち。文通相手や周囲のウソにだまされたふりをし続けるお人好しのエカ、刹那的な恋愛を続けるマル、少女であるということにコンプレックスを持っていて変わろうとするオズ、親の価値観を押し付けられ心を痛めるシバの四人。
 彼女たちはこの年頃にありがちなのか、四人そろって不安定。その要因は学校内ではなく、ほかのところにあります。だからこそ、彼女たちにとっての放送部は楽園、花園でありえたのです。放送するしないにかかわらず、他人に干渉されることなく勝手気ままに過ごすことができる放送室。そういった、逃げ道ともとれるような場所こそが、彼女たちを救う細い糸だったのではないでしょうか。


 前記のとおり、四人の少女たちはそれぞれにくせがあるだけでなく、異なる状況に置かれています。それがひとりひとりを主役にした4つの物語。ゆえに、読み手の状況や性格などによって、おのずと共感できる人物が変わってくることでしょう。僕の場合はシバだったでしょうか。いや、別に受験であれほどの勉強をしたりプレッシャーをかけられたりという経験はありませんが、理解できる気がします。たとえ大切なものであっても、


 彼女たちは失ってしまったものと同じ楽園を再び手に入れることはできません。ただし、失ってしまったものの大切さに気付き、また新しい楽園を見つけることはできるはずです。

2010年2月20日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
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