樋口有介『プラスチック・ラブ』

 帰り道、駅前に中学の同級生南生子がいた。南生子から声をかけられ話を聞くと、やはり同級生だった水江が家庭内のいざこざで家出をし、このまま学校もやめるつもりなのだという。水江を心配する南生子は、水江が家と学校に戻るよう、説得してほしいと言うのだ・・・(「雪のふる前の日には」


 単行本として出版される際、主人公が別々だった作品を集め、すべて高校二年生の木村時郎に統一したという短編集。ミステリに限らず、様々なタイプの作品が収められています。
 インパクトが強かったのは「ヴォーカル」。ミステリ的な手段が中途半端に終わり、がっかりしたところで明らかになった真相があまりに想定外でした。
 また「団子坂」は、中学の同級生の事故死という悲しい出来事から始まります。ここで木村くんが導き出した結論はより悲しく切ないもので、本当にいたたまれない気分になります。
 シリーズキャラの柚木草平がゲスト的登場したのは「プラスチック・ラブ」。この作品集は成り立ちの事情もあってか、主人公の木村くんの周囲の人物はどの作品でもまったくかぶりません。まるで8つのパラレルワールドのよう。そこに、未来の木村くんであるかのように登場するのが、我らが柚木草平なのです。それくらい似ているように見えます。まあ、木村くんの彼女たちもみんな似ているのですが。美人で、気が強くて、気難しいあたりが。このあたり、もう少しバラエティがあったほうが嬉しいかも。


 それにしても、彼らのセリフはすごくはまっているけれど、実際にはとても使えそうにありません。気の利いたセリフも、歯が浮くセリフになりそうで。


収録作:「雪のふる前の日には」「春はいつも」「川トンボ」「ヴォーカル」「夏色流し」「団子坂」「プラスチック・ラブ」「クリスマスの前の日には」

2009年9月27日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
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