森見登美彦『恋文の技術』

 京都の大学から遠く能登半島にある研究施設に飛ばされ、クラゲの研究に励む院生の守田一郎。孤独に苛まれた彼は、その心を癒すため、そして恋文の技術を手に入れるために、文通を始めた。親友だけでなく先輩、家庭教師のもと教え子、妹、先輩森見登美彦、そして・・・


 すべて文通形式で書かれた守田一郎のおよそ半年。そのほとんどが彼が書いた手紙です。
 大変興味深い形をとっているのですが、格段におもしろいとは感じられませんでした。いや、正確に言えばおもしろくないわけではないのですが、このおもしろさに慣れてしまった、あるいは飽きてしまったようです。


 文通なのですが守田宛の手紙は一通も登場せず、その内容を守田が書く手紙から類推させています。手紙を使った一人芝居のようです。しかも、複数の相手と同時に文通しているから手紙は様々にリンクして。これを雑誌連載の形でやったのですから、きっと最初から相当練られた構成だったのでしょう。
 また、文通相手が複数でしかも相手との関係は様々なので、手紙の内容や書き方から守田一郎という人物の人間性があぶりだされている気がします。


 おかしく、バカバカしい手紙による世界が繰り広げられますが、最後はとうとう、というところまで行きつきます。はたして守田一郎の運命はどうなったのか、結果がどうなったのか知りたくもあり、知らないほうが良いかと思ってみたり。
 メール全盛の時代に手紙を書くことの良さを再認識させてくれるような作品でした。手紙を書きたくなった方、いませんか?

2009年6月19日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
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恋文の技術
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