豊島ミホ『エバーグリーン』
別々の高校に進むシンとアヤコ。ふたりは卒業式のあと、約束を交わした。10年後にまた会おうと。ミュージシャンとマンガ家を目指していたふたりに10年のときは流れ、約束の日まであと二ヶ月。今、どうしているだろうか、約束を覚えているだろうか・・・
偶然ながら、「再会」がテーマのひとつになった作品が3つ続きました。会える場合、会えない場合がありますが、切なさはこの作品が一番かもしれません。
その源になっているのは、10年後の二人が抱く気持ちのリアルさではないでしょうか。
例えば、シンが抱く焦り。彼は約束したミュージシャンにはなれず、故郷で平凡に暮らしています。ですが、約束の十年後は否応なしに迫ってくるのです。
例えば、アヤコが抱く戸惑い。マンガ家にはなったもの、世間とは隔絶されたような生活や、編集者の要求に回答が出せません。こんなはずではなかったのかもしれません。
若かりし頃の夢をかなえた人も、そうでない人も、きっとどちらかに似たような気持ちを抱いたことがあるのではないでしょうか。この感情の揺れ具合がなんとも切ないのです。そしてラストシーンが。
ああ、この10年後というのは、青春の終わりなんですね。さらに10年後、ふたりはどうしているのでしょう。
10年前、なりたいと思っていたあなたは、今そこにいますか?
エバーグリーン | |
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