大崎梢『夏のくじら』

 高知といえばよさこい。中三のときに一度だけ参加したことがある篤史。それから四年。高知大への進学を機にふたたび高知の祖父母のもとで暮らすことになった篤史は、従兄弟の多郎が住む鯨井町の町内会チームに参加する。それには理由があった・・・


 よさこい見たーい! 高知へ行きたーい!
 そう叫びたくなるほど、よさこいが魅力的に見える物語でした。よさこいそのものにはまったく興味がなかったのですが、読み進めるほどにその楽しさ、熱さが伝わってきてとても魅力的に思えるのです。篤史が当初の目的を忘れたかのように、よさこいに夢中になっていくのがよくわかります。こういうイベントって、当日だけじゃなくってそこにいたるまでのプロセスが重要なんですよねえ。


 魅力的なのはよさこいそのものだけではありません。それに関わる人々。鯨井町チームの面々もまたとても魅力的です。例えば美形でクール、抜群の踊りを見せる看板のカジ、チームリーダーとして引っ張る月島と彼を支える三雲、踊りを極めようとする綾乃、あるいは衣装を担当した志織など、みな活き活きとしていて、輝いて見えます。また、多郎の葛藤も降って湧いたような話でしたが、あの流れの中では読者をハラハラさせるのにちょうどいいエピソードだったように思います。


 とにかく、よさこいの楽しさを知りたければこの本を読むのが一番。簡単には高知に行けないので地元のよさこいを見ようかとも思いますが、もう来年だとか。それまでこの気持ちを忘れないでいたいものです。

2009年5月13日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
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夏のくじら
夏のくじら大崎梢
文藝春秋 2008-08
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