東野圭吾『聖女の救済』
真柴はとうとう持ち出した。結婚から一年経って子供を授からなければ離婚するというあの約束を。だが、真柴が自宅で死んだとき、妻の綾音は北海道の実家にいたのだ。どうしたら夫を殺害できるというのか。意見を違えた草薙と内海はそれぞれに捜査を進めた・・・
「探偵ガリレオ」シリーズの第二長編。周知のことながら、第一長編は『容疑者Xの献身』であり、比較される運命からは免れられない作品です。
結論から言えば、僕はこっちのほうがよかった。
別に、石神のような男が出てくるよりも聖女が登場する方がいい、というわけではありません。もちろん。
なんと言っても、この突拍子もないトリックが衝撃的でした。
もう、このトリックひとつのために長編を書いたかのようなトリックです。人によっては「バカミス」と解釈することもあるでしょう。まさに一発勝負の大ネタです。
正直なところ実現可能でも実行しないであろう類のもの。湯川がこれを評して「虚数解」というのも理解できますね。
このトリックを生み出す発想がとにかく素晴らしいと思うのです。また、この犯人、この状況ならば実行し得るというキャラクター設定もされていて、感心してしまいます。他のトリックを使った可能性もしっかり消されていて、無理のない展開でした。
加えて、今回は内海・湯川組と草薙による二方面作戦のような捜査の比較がなかなかおもしろいものになっています。なかでも草薙のジレンマというか、心理的葛藤が物語の深みを増しています。
『容疑者Xの献身』で最高峰まで上り詰めた東野さん。
できるなら加賀刑事と湯川准教授との対決も見てみたいなあ。
また映像化されたらこの犯人は誰が演じるのだろう。そんなことを考えてしまいますね。
関連作:『探偵ガリレオ』『予知夢』『容疑者Xの献身』『ガリレオの苦悩』
【感想拝見】- ゼロからさま(2009.10.24追加)
聖女の救済 | |
東野圭吾 文藝春秋 2008-10-23 売り上げランキング : 293 おすすめ平均 東野作品らしくない平板さ ちょっと現実離れした感が・・・ トリックに合ったタイトル アイデア1発の作品 少し期待はずれでした Amazonで詳しく見る by G-Tools asin:4163276106 rakuten:book:13059908 |