法月綸太郎『犯罪ホロスコープ1 六人の女王の問題』

 湖畔のリゾートホテルへやってきた法月綸太郎。バカンスではなくカンヅメになるための逗留である。だが、初日から客とホテルのトラブルに遭遇し、しかも夜には殺人事件が。被害者は、昼間のトラブルを引き起こしたルポライターを名乗る恐喝屋だった・・・「ゼウスの息子たち」


 星座にまつわる事件にミステリ作家の法月綸太郎が挑む短編集。エラリイ・クイーンの『犯罪カレンダー』に倣ったそうですが、とりあえず前半の6作だけを刊行しそれを表明してしまうするあたり、寡作がネタになる法月さんらしい。
ギリシャ羊の秘密」
 取材中にホームレス殺害の現場に居合わせ、軽傷を負った飯田。しかし、残された証拠から導かれる容疑者がいない・・・1つのアイテムが捜査をズルズルととんでもない方向へ引っ張って行ってしまう様が印象的。被害者が身元不明のホームレスである点がうまく生かされています。
「六人の女王の問題」
 転落死したライター。その死には、かつて所属した劇団と脚本が絡むのか・・・なんとも言えないオチと、劇団のメンバーの印象が非常に強い作品。いきなり現れたト書きも。
「ゼウスの息子たち」
 カンヅメになっていたホテルで、綸太郎は殺人事件に遭遇する。被害者は、ルポライターを名乗る恐喝屋だった・・・双子同士で結婚したというホテルのオーナーの使い方がおもしろい。一筋縄ではいかないことは想像できても、意表を突く仕掛けに驚きました。本作品集のベスト。
ヒュドラ第十の首」
 殺された男は、妹を自殺に追い込んだ不倫相手の男を捜し、候補を3人に絞り込んでいた・・・残された3人からさらに絞る消去法。最後の一捻りがおもしろい。
「鏡の中のライオン」
 女優殺しを疑われた新人脚本家のアリバイは、張り込み警官によって証明された。脚本家のベッドの下には女優のピアスが1つ・・・無理矢理感はありますが、作品はなかなか楽しませてもらいました。
「冥府に囚われた娘」
 水中毒で植物状態になった友達から、状況を知らせるメールが携帯電話に届いたが・・・いかにも都市伝説的なエピソードと殺人をうまくつなげ合わせた作品。オチを導き出す過程に驚き。


 牡羊座から乙女座までの6つの星座をモチーフにした作品集。この星座による縛りが創作にヒントを与えるのと同時に、創作の自由を奪ってやや窮屈にしているようなイメージがあります。
 ただし、暗号解読から都市伝説まで作品そのものはバラエティに富んでいて、読み手を飽きさせません。それぞれがコンパクトにまとめられ、読みやすい作品集です。惜しむらくは、6作止まりで残りの6作がまとめられるのがいつになるのかわからないことでしょうか。早く続きをと急かすのは酷なことですか?


収録作:「ギリシャ羊の秘密」「六人の女王の問題」「ゼウスの息子たち」「ヒュドラ第十の首」「鏡の中のライオン」「冥府に囚われた娘」

2008年3月31日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
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