桜庭一樹『私の男』

 花にとって淳悟は遠縁であり、父であり、子どもであり、そして男であった。24歳になり、嫁いでいく花を待ち受けていたものは・・・震災孤児として引き取られた花と、彼女にして「最低だけど最高」と言わしめる淳悟の禁断の愛の物語。


 狂気を秘めた深い愛。その圧倒的な筆致に、何者にも妨げることができない強い愛に、もうたじたじなのです。
 また、時系列を逆にするという一点だけで、この物語は単純な禁忌から別れへというストーリーから脱し、読者をより強く引きずり込み、歪みを正当化する力を与えられているように思えてなりません。構成力の勝利でしょうか。


 しかしながら、この作品を楽しめたかというとどうでしょう。残念ながら、あまり楽しめたとは言えませんでした。
 別に、この二人の禁断の関係を生理的に受け入れられないとかそういうことを言うつもりはありません。ただ、東京での逃亡生活や極寒の北国での生活があまりに閉塞的で息苦しく、楽しめるようなものではなかったのです。
 少なくとも、この作品は僕が桜庭さんに期待したものではありません。そこが残念。

2007年12月11日読了 【5点】にほんブログ村 本ブログへ
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私の男
私の男桜庭一樹

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