有栖川有栖『女王国の城』

 大学に姿を見せなくなった江神。どうやら行き先は新興宗教の本拠地、神倉らしく、身を案じたアリスたち英都大学推理小説研究会の後輩4人は神倉へ向かう。江神の安否を確認し、手間はかかったものの合流したアリスたち。だが、滞在していた人類協会の総本部で惨劇が起きた・・・


 江神シリーズ15年ぶりの第4作。前作『双頭の悪魔』は文庫化時に読んでいるので、このシリーズを読むのは8年ぶりです。それだけに、大きな期待に応えてくれるか不安もあったのですが、全く不要でした。
 このシリーズは毎回クローズド・サークルを舞台に事件と推理が繰り広げられます。今回もその設定が秀逸。事件そのものの謎とは別に、もうひとつの謎を最後までずっと引っ張り続けます。しかも最終的に明かされたとき、2つの謎が融合する姿がとても美しいのです。
 もちろん、事件の謎も「読者への挑戦」の後に、論理的かつ美しく、しかも挑戦的に解明され、堪能という言葉が相応しい読み応えでした。


 中盤、いくらか不要とも思われるペダントリーが見受けられたのですが、登場人物や舞台の特殊性を考慮すれば仕方ないことかもしれません。むしろ、それ以外のところに綿密に伏線が引かれていることの方が重要で、高く評価するべきでしょう。振り返ると、その伏線に圧倒されてしまいます。
 また、クローズド・サークルに付き物となってしまった携帯電話の処理方法が、前作から時代設定を継続する(=バブル期のまま)ことによって難なく処理されているのは興味深いものでした。21世紀を舞台にしたクローズド・サークルものは携帯電話の処理が難しいと言わざるを得ません。
 個人的には望月・織田のコンビが活躍したのが嬉しかったですね。「邪魔しやあすな!」と。
 「あと○作で完結」などと言わず、書き続けてほしいシリーズ。多くの人に読んでほしい傑作です。

2007年10月24日読了 【10点】にほんブログ村 本ブログへ
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