米澤穂信『インシテミル』

 求人雑誌に載っていたバイトは破格の条件だった。誤植じゃないのか。訝しがっていた結城理久彦だったが、車を買いたい一身で参加してしまう。時給1120百円のバイトは暗鬼館という地下の館で7日間、12人でモニターとして生活するというもの。だがそれは、殺し合いを誘発する危険なルールを持っていた。


 主に日常の謎青春ミステリで活躍してきた米澤さんが、満を持して放つクローズド・サークルものミステリ。それだけにかなり丁寧に作りこまれていて、隙がありません。本格ミステリのガジェットもふんだんに盛り込まれ、次はいつ、誰が、どこで、どんな風に殺されるのかというスリルがずっと持続し続け、とてもおもしろく読みました。
 12人にそれぞれ1つずつ与えられた12の凶器。それぞれ異なる殺害方法もいいのですが、それに添えられたメモランダムがまたいいのです。ついついニヤニヤしてしまいそうです。
 ただ、ミステリのゲーム性を重要視したのでしょうか、あの人の背景にあるものがはっきりとは書かれていなかったことが残念。


 米澤さんの本格愛が具現化されたような作品。本格ミステリが好きな人なら、きっと楽しめる作品でしょう。
 もっとも、今までの青春ミステリを期待していると、裏切られたような何かしらの違和感を覚えるかもしれませんね。

2007年9月26日読了 【9点】にほんブログ村 本ブログへ
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インシテミル
インシテミル米澤穂信
文藝春秋 2007-08
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おすすめ平均
stars途中からややこしくなった
starsゲーム感覚で楽しめる「クローズド・サークル」ものミステリ
starsちょっと『CUBE』?
stars★五つは伊達じゃない
stars極限の状況下での恐怖 おすすめですっ★
stars文句なしに一気読み!
starクローズドサークル

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