土橋真二郎『扉の外』

 目を覚ますと、そこは見たことのない空間だった。修学旅行に向かっていたはずなのに。モニター画面では、ソフィアと名乗る人工知能が2年4組の面々に支配と庇護の事実とこの空間でのルールを告げた。動揺するクラスメイトたち。だが、紀之はいち早く腕輪をはずして、ソフィアの支配と庇護を拒否した。宇宙だといわれるこの空間の外はどうなっているのか。ルールの下で生き延びることはできるのか。


 戦略シミュレーションゲームをモチーフにしたと思われる第13回電撃小説大賞<金賞>受賞作。
 ネット界隈ではどうやら評価が真っ二つに分かれているようなのですが、どうなのでしょうか。僕はとても楽しく読みました。


 スペード、ハート、ダイヤ、クラブの4つが用いられた戦略的な要素もあり、それはそれで楽しいのですが、この作品の本質は危機状態に陥ったときの人間の行動と、群と個の人間関係にあるのではないかと思うのです。すなわち各色のオピニオンリーダ−(たち?)の統率方法の比較と、その他大勢のとった行動、及び群の中に飛び込む異分子の存在について。読み出したときには戦略的な面を期待していただけに少し違和感を覚えたのですが、非常に興味深い小説であったといえます。
 また、ラストシーンについては投げっぱなしで拍子抜けの感は否めないのですが、5月には『扉の外 II』が刊行されるということなので、残された荷物はそれに期待しようかと。もっとも、『もしも人工知能が世界を支配していた場合のシミュレーションケース1』というのが原題だったそうなので、『扉の外 II』が『〜2』だとすると全く違う内容なのかも。

2007年3月4日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
おすすめ平均
stars密室に放り込まれた尾崎豊
starsアリだろう。
stars私的には最高のお話でしたが……?
stars微妙に消化しきれない内容。
starsう〜ん…(^^;

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