谷原秋桜子『天使が開けた密室』

 行方不明になった父を捜すためアルバイトに励んでいた倉西美波。だが、そのアルバイト先でミスを犯し、多額の借金を背負ってしまう。「お金がほしい!」その一念で紹介された「寝ているだけで5000円」というアルバイトを引き受けるが、その仕事内容はとんでもないもの。しかも、よりによって殺人事件に巻き込まれてしまい・・・


 まさにライトなミステリ。
 以前富士見ミステリー文庫で刊行されていた作品の復刊。新たに短編「たった、二十九分の誘拐」(発表済)が収録されました。
 ミステリとしては富士ミスとして刊行されていただけに、かなりライトな感じ。中盤まで事件自体起きず、その事件もトリックや真相の細部はともかく、犯人にたどり着くのはさほど難しいと思えません。
 ただ、それだけにミステリ慣れしていない人が読むのにはいいかもしれません。推理する楽しさを味わうには手頃でよいかと。でも、しっかりと細かいところまで伏線が引いてあったりしてちゃんと本格ミステリしています。ただ、これが続編の『竜の館の秘密』までしか出せなかったのは、ある意味悲劇。「L・O・V・E!」にリニューアルされた今の富士ミスにはちょっと合わなさそうだし。タイトルは『天使が開けた密室 (創元推理文庫)』って合うかもしれませんけど。


 併録された「たった、二十九分の誘拐」もなかなかよかったです。この動機はちょっと予想できなかったなあ。


収録作:「天使が開けた密室」「たった、二十九分の誘拐」
関連作:『龍の館の秘密』『砂の城の殺人

2006年12月13日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
おすすめ平均
starsおシャレなタイトルの佳作
starsもう少し工夫を
stars「天使」と「密室」
stars江戸言葉が語る本格探偵小説
stars仲良し女子高生3人組物語

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