恩田陸『夜のピクニック』
「歩行祭」、それは一昼夜かけて80km歩くという北高の一大イベント。クラスメイトと、部活の仲間たちと夜歩く、あるいは走る。それだけのことなのに、それは特別なことだった。そして貴子は、この歩行祭に1つの賭けをしていた。
青春真っ只中。そんなイメージの作品でした。こういうのって十代特有のものじゃないですか。うらやましいような、ちょっと恥ずかしいような、何かそんな感じです。
やっぱり、こういう作品を書くと、恩田さんのうまさがより際立つような気がします。非常に幅広い作風の恩田さんですが、ミステリやSFよりも青春小説が一番好きですね。ミステリやSFのときのような最後のまとまりの悪さを感じないのです。最後まですっきりとしています。
なんといってもうまいのは、登場人物の配置にあるように思います。同じクラスになってしまったが、互いの複雑な関係を隠し続ける融と貴子。その2人を取り囲む忍と美和子、留学してしまった杏奈、陽気な高見、そして打算的な内堀。バランスがいいというか、うまい具合に配置されて、よく動くというか。高校時代を思い起こすと「あんな人もいた、こんな人もいた」という感じでしょうか。
本当に、一昼夜かけて歩くというだけの話だけなのに、読み出したら止めることができない、そんな不思議な作品です。融や貴子はきっと汗だくでボロボロだろうけれど、読み終わったときに爽やかな気持ちにさせてくれます。ぜひ、中高生にも読んでほしいですね。映画化されるそうですが、まず原作から。(映画化は陳腐な作品になってしまいそうで、ちょっと怖かったりします)
ところで、『夜のピクニック』って語感やイメージはいいけど、ピクニックじゃないよね、これ。
【感想拝見】- 粋な提案さま(2009.04.23追加)
夜のピクニック | |
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