法月綸太郎『怪盗グリフィン、絶体絶命』
「あるべき物を、あるべき場所に」これが怪盗グリフィンの信条。彼の元に届いた1通の手紙、それは「怪盗グランプリ」への招待状だった。届かなかったかのように装って送り返したグリフィンだったが、この後に依頼されたゴッホの絵のすり替えを引き受けた彼はとんでもない陰謀に巻き込まれていく・・・
綾辻行人さんの『びっくり館の殺人』とともにミステリーランドの第9回配本となった法月さんの新作『怪盗グリフィン、絶体絶命 [ 法月綸太郎 ]』は、なんと非探偵法月もの。しかも舞台は海外。これをはじめて聞いたときには、綾辻さんが「館シリーズ」だと聞いていたので逆に驚きました。
さて、3部構成になった本作は、徐々に緊迫感が高まっていく怪盗もの。真実はわかりやすく語られていて、子ども向けのミステリとしては極めて正統派というような雰囲気を感じたのですが、それでいて伏線は縦横無尽に張り巡らされ、しかも二転三転のどんでん返し、「かつて子どもだった」大人でも満足できる楽しい作品です。特に「第3部 大統領官邸」はそれらのすべてが集約されていて、かなり読み応えがあります。
かつて『頼子のために』でハードボイルド色を加えてターニングポイントとした法月さんですが、本作もまた新たな方向性を示すものとなるのかもしれません。シリーズ化してほしい作品です。
【感想拝見】
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