若竹七海『心のなかの冷たい何か』

 13日に若竹七海さんの『心のなかの冷たい何か (創元推理文庫)』を読了。


 一人旅の途中に若竹七海が出会ったのは、奔放な振る舞いの美女・一ノ瀬妙子。自分とは相容れないものを感じていたが、後日、妙子から誘われ、クリスマスイヴをともに過ごす約束をする。しかし、七海は数日後に妙子が自殺未遂を図ったと知らされ、自宅には妙子からの手記が郵送されてきた。手記は、天才を自負する毒殺魔の独白から始まるものだった・・・


 今から14年ほど前に刊行された若竹さんの第2作。デビュー作『ぼくのミステリな日常 (創元推理文庫)』の続編です。
 2部構成になっているのですが、圧巻だったのは1部の方。とにかくこの毒殺魔の手記のインパクトが強いんです。普段ホラーとかサイコサスペンスとかはあまり読まないからか、この描写は強烈でした。あまりに簡単な手口なのに、おそらくは気づかれないであろう様々な毒のオンパレード。この手記が1冊続いていたら、正直なところちょっと僕にはつらいかな。そして最後には・・・思わず1部をもう一度見返してしまいました。
 一方2部は主人公若竹七海の探偵活動記。天才的名探偵というよりも、地道に敵と対峙するハードボイルド的探偵といったところでしょうか。後の葉村晶に通ずるところがあります。


 埋もれていた作品と言ってもいいと思いますが、この頃からすでに人間の悪意というか、暗い部分に焦点を当てていたのですね。
 ただ、先入観があるためか、なんとなく一昔前の作品というイメージはしました。小道具とかは全く気にならなかったのですが、どうしてでしょう。


関連作:『ぼくのミステリな日常

2006年1月13日読了 【6点】にほんブログ村 本ブログへ
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stars寒さと温もりの季節−クリスマスに向けてのストーリー

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