桜庭一樹『ブルースカイ』

 桜庭一樹さんの『ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)』を読了。


 まだ「少女」という概念が存在していない1627年のドイツ・ケルン選帝候領レンス。もはや「少女」という概念が消え失せてしまった2022年のシンガポール。そして、現代2007年の鹿児島・・・3つの箱庭を駆け抜けた「少女」青井ソラの物語。


 おもしろかったのですが・・・ただ、理屈でうんぬんというよりも、感覚で「桜庭一樹」を感じられるかどうか。そのへんが、この作品をどのように評価するのかの分かれ目でしょう。
 近未来シンガポールも鹿児島もおもしろいのだけど、一番はやはり中世ドイツ、魔女狩りの世界でした。祖母と暮らす10歳のマリーが「アンチ・キリスト」と出会って、2人で脱出を試みる・・・この世界観、そして2人のやり取りの中で当時と現代とのギャップなど、物語にグイグイ引き込まれてしまいます。


 ただし、続くシンガポール、鹿児島へとあまり強いリンクを感じることができず、ドイツだけで増量、完結してもよかったかのように思います。もっとも、ドイツだけではまったく異なるストーリーになってしまうでしょうけど。
 やっぱり、シンガポールと鹿児島のパートがやや弱かったということでしょうか。

2005年10月18日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
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ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)
ブルースカイ (ハヤカワ文庫 JA)桜庭一樹
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