近藤史恵『青葉の頃は終わった』

 昨日、近藤史恵さんの『青葉の頃は終わった (カッパ・ノベルス)』を読了。


 学生時代に出会い、その後10年にわたって付き合ってきた6人の男女。だが、その美貌から最も目立った存在だった瞳子が自殺した。ホテルから身を投げて。その突然の死に、ほかの5人には原因の心当たりがなかったが、瞳子から「私のことを殺さないで」と書かれたハガキが送られてきて、その意味に戸惑い、そして苦悩する。


 4話からなる長編小説。連作集とはいいにくいです。ミステリアスな雰囲気が漂う青春小説。各話は語り手が異なり、読み進めるうちにそれぞれの人物と瞳子との付き合い方、距離というものが徐々に明らかになっていきます。


 ひときわ目を引く美しさを持ち、常に奔放に振る舞う瞳子。男たちにとっては憧れの存在であり、女たちから見れば嫉妬の対象でした。そんな彼女の自殺の理由は、きっとおなじような立場の者でなければ気づき得ないようなこと。一見悪意のように感じられる瞳子の行動は、不器用で世の中を渡っていく術を知らない彼女にとっては、「本当の自分」を知ってもらう最後の手段だったのかも知れません。たとえそれが、他人の人生を変えてしまうものだったとしても。


 青春は時として「ほろ苦い」なんて言葉で修飾されますが、本作は「ほろ苦い」では済まされないような青春の終幕。まさに青い時代の最後。大人になれない、あるいは大人になりたくない人たちを描いた青春小説の佳作です。残された5人はどんな大人になっていったのでしょうか。

2005年6月9日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
青葉の頃は終わった (カッパ・ノベルス)
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