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森晶麿『恋路ヶ島サービスエリアとその夜の獣たち』

review
恋路ヶ島サービスエリアとその夜の獣たち (講談社文庫)

恋路ヶ島サービスエリアとその夜の獣たち (講談社文庫)

 

 その日は理代子にとって運命の日だったのかもしれない。結婚を約束していた男の浮気が発覚し、恋路ヶ島サービスエリアでの深夜バイトは浮かない気分だ。でも、たった一言がそんな夜を変えた。「静かな夜には口笛を吹きたくなる奴がいるものです。口笛が聴こえる夜は、もうすでにいつもの夜とは違いますからね」・・・・・・

 観覧車のあるSAが舞台ということで、何度か行ったことがあるPAを思い出してしまいます。あそこも夜になると何か事件が起きるのだろうか、なんて考えてみたり。

 あれもこれもといろいろなものを少しずつ詰め込んで、結果として少々中途半端になってしまった印象。どれもそれなりに魅力的で、気になる話なのに。物語の最初に登場し、文庫の表紙にも描かれている理代子が主人公なのでしょうが、その印象はずいぶん薄い気がします。おそらく登場人物の中でいちばん普通な人だから。あらすじだけ見たら、「恋路ヶ島SAの売り子は一年以内にプロポーズされる」とか「口笛の聞こえる夜はいつもの夜とは違う」とか、いかにもおもしろそうなのですが、どうもほかのいくつかの部分の方がインパクトがあったのです。
 たとえば、某司会者によく似せたあの男はどんな形で関係にケリをつけるのか、死体を運んでいる(ことになっている)兄弟はどんな結末を迎えるのか、なんておそらくは第二第三の話が結構魅力的に描かれています。こっちはこっちでよかったと思うのですが、どうにも無理やり絡めた感じがしてしまって。

 簡単に言うと、作者の意欲が見える作品であることは間違いありません。読み手がどこに力を入れるか、誰に注目するかで感じ方も変わってくるのではないでしょうか。

2017年1月4日読了 【6点】にほんブログ村 本ブログへ