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辻村深月『東京會舘とわたし 上 旧館』『東京會舘とわたし 下 新館』

review
東京會舘とわたし(上)旧館

東京會舘とわたし(上)旧館

 
東京會舘とわたし(下)新館

東京會舘とわたし(下)新館

 

 東京・丸の内、皇居の御濠を臨むように建てられた社交場・東京會舘。本作は大正11年の旧館竣工以来、常に時代とともにあり続けた東京會舘と、そこで時間を過ごした人々の物語。

 私は地方在住で東京にはあまり縁がなく、東京會舘も名前は聞いたことがあるという程度でした。これほどの歴史があり、文学賞の舞台でもあった場所なのに。

 連作短編集のような体裁で綴られる各編は、その時代その時代の人々、文化、世相を映し出し、時の移り変わりだけでなく時代を超えた人々の物語の流れを感じさせます。各章の登場人物たちは時を超えてさまざまな形で後日の章に姿を見せます。ある人はエピソードとして語られる人物として、またある人は年を重ねた姿で。なんだか東京會舘との強い結びつきを見せられたような気分でした。

 辻村さんにとっての東京會舘は、やはり直木賞の舞台なのでしょう。「煉瓦の壁を背に」の日付は確かに辻村さんが『鍵のない夢を見る』で直木賞を受賞した日。当然ですが、そこには強い思い入れがあったように見受けられます。

 これだけどっぷり浸かってしまうと、東京會舘に行きたくなるのは人の性でしょうか。残念ながら現在は建て替え工事中の東京會舘。数年後に完成した建物にはぜひ行ってみたいと思います。あのシャンデリアもコレニア大理石も見てみたいし、たとえ食事はできなくても、パピヨンは・・・・・・

収録作:「クライスラーの演奏会 大正12年(1923年)5月4日」「最後のお客様 昭和15年(1940年)11月30日」「灯火管制の下で 昭和19年(1944年)5月20日」「グッドモーニング、フィズ 昭和24年(1949年)4月17日」「しあわせな味の記憶 昭和39年(1964年)12月20日」「金環のお祝い 昭和51年(1976年)1月18日」「星と虎の夕べ 昭和52年(1977年)12月24日」「あの日の一夜に寄せて 平成23年(2011年)3月11日」「煉瓦の壁を背に 平成24年(2012年)7月17日」「また会う春まで 平成27年(2015年)1月31日」

2016年11月27日読了 【9点】にほんブログ村 本ブログへ